2015年3月31日火曜日

モントリオールの寒さ対策

聞き手Y:山口
受け手M:モントリオールJCPデザイン増本氏 


Y:今年、NYで記録的な大雪が降ったそうで、日本のニュースでも話題になりました。
   昌子さんの住むモントリオールも冬はマイナス40度、夏は40度近くまで気温が上がると伺いましたが、
 その気温差に対する家の構造や設備について教えて頂けませんか。




M:最近は、温暖化の影響で40度近く気温が上がるようになりましたが、1年のうち1㎝以上の雪が降る日が年に平均109日なので、モントリオールでは、長い冬の対策が重要です。ただし、ほとんどの家庭で、暖房が行き届いているので、家の中は、全く問題ありません。

 
モントリオールの位置

 

Y:そうですよね。私たちが見せていただいたどこのお家でも、全館空調設備が整っていましたね。
 

M:アパートのオーナーは11月から4月の終わりまで、暖房を入れる義務があります。我が家はオイルヒーターと電気で暖房しておりましたが、現在は電気のみでお湯を沸かし、その温水が各部屋の暖房器を巡っています。ほとんど収納でしか使っていない地下室でも、暖房が入っていますので、この極寒でも、1階のフローリング床は靴下で、2階フローリンング床は裸足でもOKです。
 
温水暖房設備例
 

Y昌子さんのお家はお湯が循環しているタイプなのですね。

 
M:そうです。お湯が循環するラジエータが外壁や、階段室周りの幅木のところについていて、暖かいお湯が通った管で冷たい空気が暖められ、室内に暖かい空気が出てくるというシステムです。全体的には同じ巾木式でも施工位置が簡単な電気暖房がほとんどの家庭で採用されています。
 
 
 
 
幅木暖房しくみ
 
 
Y:あっこれですね!私たちがモントリオールに行ったときに泊まった宿にもこんなようなものが付いていました。
 
私たちが泊まった宿
 
 
M:以前は、温水暖房が主流でしたが、1950年代を境に電気によるホットエア暖房になりました。下記は2011年の住宅で採用されている暖房システムの割合を示すグラフです。これをみると半分以上が強制空調暖房システムを採用しているようですね。これは冷房にも簡単に対応できるプラス面があるからです。
 
 
床に写真のような吹き出し口が付いていて、ここから温風冷風が出てきます。
 
 
 
Y:私たちが採用している全館空調器は、天井裏に設置するので、天井に吹き出し口が付いていますが、電気で強制的に冷暖房するので、システム的にはこれが一番近いですね。それにしても、その寒暖差は人だけでなく家にも負荷がかかりますよね。何か日本の家と仕上げの材料や形で違う点はありますか?
 
M:仕上げ材よりも全体の断熱仕様及び暖房システムで家を維持します。ちゃんと全館暖房をしていない家のレンガはすぐに凍結してもろくなり、屋根も凍ります。
 
  カナダ政府により、品質を確保するためのガイドラインが決められています。法的な力はないですが、このEnergy star認定の窓やドアを採用することで、家の品質が保証され、寒暖差にも強い家となるのだと思います。
 
Y:暖房システムは、暑さ寒さをしのぐためだけでなく、家を維持するためにも、重要な役割を果たしているのですね。