2014年6月24日火曜日

北米のバスルーム

聞き手:高原
聞き手:山口
受け手M:モントリオールJCPデザイン増本氏




Tどのプラン集を見ても、北米の住宅には家1戸に対して、バスルームが複数あります。
  時にはお客様の宿泊用も設けてあります。日本では、余程の豪邸でないと複数の設置
   はあり得ないのですが、どんな背景があるのでしょうか。


M:Baby boomerたちが育った家は、ほとんど浴室は一つの時代でした。
  その頃、6~7人兄弟はざらでしたから、寝室も女兄弟(姉妹)と男兄弟で、2寝室に
   寝台ベッドで寝起きしていたでしょうから、寝室も浴室も狭くていらいらしたはず
   でしょう。ですから、大きい家にはキッチンだけでなく、自分だけの大きいバス
   ルームがほしかったのではと思います。

 
上の絵は、1915年のバスルーム。約100年前のバスルームですが、
今でも全く同じです。それまで別々のところで済ませてきた身づくろい
一つの部屋にまとめ始めたころ、1903年に初めて各室にバスルームの付いた
ホテルがアメリカに誕生しました。バスルームメーカーは早速それを、
庶民のアパートや住宅建設にも普及させました。
5‘×8’(1.5m×2.4m)が今でも一般的バスルームサイズです


T:カナダでも昔は家も小さく、浴室も一つであったと聞いて、何となく日本人の僕と
 しては、変な安堵感がしました。

Y: キッチンの時と同様で、大きなお家には、面積相応で2つのバスルームを設けている
  というわけですね。・・・・ん??でも、この発想は日本には当てはまらないかも
   しれません。日本は、大きな家でもほとんどが、お風呂は1か所です。面積が広く
   なることはあるかもしれませんが。何か別の原因もあるかもしれませんね!
   そのあたりはいかがでしょうか。

 
 
Mそうですね、ブーマー世代は経済的にも余裕がありますから、子供に邪魔されない
  自分たちのバスルームがほしいわけです。子供たちも、小さい時から男女別、
  一体を洗いますから、日本のように小学校に入っても父親と一緒にお風呂に入る
  女の子は絶対いません。自分の体は一番Privateなもの、と教えられます。
  親専用にひとつバスルームを作れば、子供用がいるわけで、その大きさは以前の
  スタンダードが普通です。子供部屋の配置や親の経済的状態によって
  Jack & Jill(子供部屋を挟んで両方から使える浴室のニックネーム)になったり、
  各個室にひとつずつになったりでしょう。

  

 Y確かに、小さな子供でさえ、自分の部屋に一人で寝るシーンを海外ドラマでは見かけ
  ます。

M:日本では、風呂上がりに裸で、ビール一杯なんてあると思いますが、私たちは、
  寝室を出るときは必ずガウンを羽織って出たものです。テレビドラマなどにも出て
  きますが、子供も同じようにガウンを着るようにしつけられたものでした。今の若い
  世代は、パジャマ、ネグリジェなどというスリープウエアを着る傾向は薄れて
  普段着っぽくなってきているようですけどね。




Y: 子どもも、大人と同じような扱いをするといった文化の違いもバスルームの数に関係しているかも知れませんね。


Tそれにしても、北米のバスルームは日本人には、考えられないほどの豪華さを感じ
  ます。海外のホテルで宿泊しても、その豪華さは桁はずれですよね。日本では、
  現在、コスト面、清掃の手軽さ、床下の湿気を考慮した、樹脂製のカプセル型
  ユニットバスが普及しています。ところが、カナダの住宅は浴槽こそ樹脂製ですが、
  洗い場などはタイル貼りになっていた記憶があります。左官屋、水道屋など複数の
  職人で作るのは、コストがかかるのではないでしょうか。その辺の事情をお聞き
  したいものです。



 

M:昔、カナダのどこかの社長が、日本のユニットバスを見て『これは良い!カナダでも売ろうかな』と感心していましたけど、大きい家、大きいキッチン、大きいバスルーム・・・・新築はともかくとして、レノベーションの第一位はキッチンとバスルームです。良いキッチンやバスルームが付いている家は転売する時、高く売ることができると聞きました。


Tほ~、北米ではバスルームもキッチン同様、家の見せ場になっているという事ですね。日本では考え付かないところですね。

 

M:ただ新品にするだけではなく、その時の流行に合わせて模様替えをしたり、子供が巣立った後に壁を取っ払ってスペースを広げたりするなど、レノベーションしやすい様に、ユニット化されていないのだと思います。


Tなるほど~日本のユニットバスは、模様替えは出来ませんからね。
 










 

2014年6月2日月曜日

北米の家庭料理とキッチン環境

聞き手:山口
受け手M:モントリオールJCPデザイン増本氏

 
 
 
Y: 北米住宅視察や海外ドラマで見る、広くてかっこいいキッチンは、やっぱり憧れちゃいますね~。その上汚れていない・・・。実際家庭でどんな料理が作られているのか気になります。教えていただけませんか? 
 

M: 一般的に、朝は至極簡単でしょうね、TVコマーシャルでも朝はシリアルとジュースとかです。殆んど共働きですから、キャラ弁などは作る暇はないですし、そういう文化もありません。お昼はみんなランチを持っていくか、外食で、夕食のみ家族で一緒に食べるかな。我が家も朝は果物とパン系です。
 

Y: 確かにアメリカの朝食は、シリアルのイメージありますね。日本の朝食といえば、パンもしくは、お味噌汁とごはんに昨晩の残り物のおかずといった感じですね。
 
 
M: 2004年に行われた調査から現代のカナダ人の食生活の実態が浮かび上がりました。35千人以上の人に、聞き取り調査した結果によりますと、35年前に比べると、摂取カロリー量は減少しているそうです。しかし野菜や果物の摂取量が目立って少なく、とくに4歳から9歳の子供たちは、野菜や果物と共に乳製品の摂取量も必要量を下回っている結果が出ました。また、1/4のカナダ人が、日常的に何がしかの「ファーストフード」を口にしている実態も浮かび上がりました。
 
下記の週間メニューを紹介するサイトをご覧ください。
  ◇カナダ週間メニューhttp://www.womansday.com/food-recipes/month-of-menus/ 

平日のメニューを見ますと、ほとんどが、オーブン料理かパスタ料理で、共働きの母親が帰宅後の時間を有効に使えるメニューがほとんどです。

共働き、郊外の戸別住宅、託児所や学校の送迎など、キーワードを並べると、主婦が家庭で過ごせる時間が限られていることも明らかですね。

 
 


Y確かに、ご主人と同じように働いていたら、食事を作る手間はあまりかけられませんね。オーブン料理や、炒め料理、パスタなどの単品料理が多いのも、単に好む料理が違うだけでなく、生活スタイルに違いがあるからということですね。
オーブン料理が多いという事ですが、日本は、焼く、炒める、煮込むといったコンロを使う料理がほとんどです。また『一汁三菜』の様に、主食のおかずとなるものの品数が多く、料理をする時間だけでなく、品数が多い分、使うお皿も多くなります。
ですから、日本では、キッチンには収納量と、広さ、シンクの大きさが、求められます。最近では、アメリカやカナダと同じようにビルトイン食洗機が付いている家も増えてきましたが、それでも、シンクは広い方が好まれます。そう考えると、日本のキッチンの方が大きくなるような気がしますが、海外のキッチンの方が広くて立派ですよね。どうしてなのでしょうか。収納しているものが異なるからなのでしょうか。
 
 
M日本の住宅事情、とくに土地の購入は厳しい現状にあると思いますから、日本の家が   小さくなるにしたがってキッチンも狭くなる理由は理解できます。北米のキッチンは、1926年に開発された、Frankfurt Kitchen(下記写真)は、1.9m×3.4mで換気設備の発達していない時期のモデルデザインとなり、住まいの他の部屋とは仕切られた『Work Kitchen』として集合住宅建設の増加とともに標準化されました。同時にキャビネット類もユニットキッチンとして大量生産されるようになり、Baby boomer(第二次世界大戦の終結直後に、復員兵の帰還に伴って出生率が上昇した時期に生まれた世代)の要求に応えてデラックス化していきました。
 
 
 
 1980年の換気フードの発明により、今まで1室に仕切られていたキッチンは、リビングへ解放されて以来、オープンキッチンが主流となり、家庭生活の中心を占めるようになりました。巨大キッチンは、Baby boomerの購買欲を満たすべく仕組まれたマーケティングのなせる業だったのでしょう。巨大なDream house、ビッグテラス、ビッグカー、ジャクジーなどなど)とともに、バトラーキッチン、ワインセラー、アイランドキッチン、エンターテイメントキッチンと、何もかも抱え込んだ結果がビッグキッチンとなり、今では『Massive,football field-sized kitchens with islands』と呼ばれています。
 
 
 
Y:そうなると、キッチンの大きさは、調理に必要だからというわけではないようですね。なるほど~巨大キッチンは『ステイタスの象徴』でしたか。
 
 
M:北米では、2009年の経済ショックを受けて、『大きい住宅』から、ヨーロッパに見られる『コンパクトハウス』が好まれるようになりました。その結果、コンパクトで作業がしやすく、便利、そして良質の材料を使ったシンプルなデザインが、これからのキッチンのトレンドとなるそうです。キッチンスペースとしては、平均約10㎡(約6帖)というところですね。調理用家電も、毎日使用する数点を残して、すべてキャビネットに収納することが普通です。
 
 
Y:以前より、家の大きさがコンパクト化し、前回のお話であったように、ホームパーティーも減ってきている現在では、それほどキッチンに大きなスペースを取らなくてもよくなってきたわけですね~。